研究概要 |
現在、世界の各地において、環境問題に対する意識の高まりとともに、自然環境の保全と、未利用植物資源の調査、研究が必要とされている。北海道にはアイヌの呪術や信仰を基盤とする思考から選択された生薬も多くあり、歴史的な採薬の原点を提示しているものと考えられる。このような観点から本研究では、新たな医薬資源としての北方系未利用資源の調査研究を進めた。 北海道で採集した北方系植物(エゾユズリハ、ハイイヌガヤ、ヒカゲノカズラ、ノゲイトウなど)の抽出物についてスクリーニングを行い、新規アルカロイドの分離、精製を行った。また、亜熱帯地域に自生する関連植物についても検討を行なった。分離した化合物については、各種2次元NMR、高分解能MS、X線結晶解析等の分光学的手法ならびに分解や誘導反応などの化学的手法を用いて、立体化学を含めた化学構造を明らかにした。その結果、エゾユズリハからは、ダフネゾミンL-S、台湾産ユズリハより、ダフニグラウシンA-Cを単離した。さらに、中国産ユズリハより、新規骨格のカリシフィリンA, Bを単離した。一方、ヒカゲノカズラ科のヒモランから新規シーボルディンA、セイソウシから環状ペプチド、セロゲンチン類が得られた。このうち、シーボルディンAは、アセチルコリンエステラーゼ阻害活性を示し、セロゲンチン類にはブタ脳由来のチューブリンに対して、顕著な重合阻害活性が認められた。 また、Polonovski反応を応用して、ヒカゲノカズラ科ホソバトウゲシバより単離したセラチニンからセラテゾミンAへのバイオミメティックな化学変換を行なった。
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