研究概要 |
交付者は研究実施計画に従って、4-alkoxy-1-(phenylsulfenyl)-1,3-butadieneを強塩基でリチオ化することを検討したが、アルデヒドとの付加生成物であるアルコールの収率は低く、さらにこれを酸で処理すると2,4-pentadienal誘導体ではなく、分子内の閉環反応が進行するすることが分かった。その結果、交付者はこのジエン類を用いてアルデヒドやケトン類の2,4-ペンタジエナール化を行なうことは困難であると判断した。そこで、置換基をさらに増やした1,2-bis(sulfenyl)-1,3-butadiene類を合成し、そのリチオ化およびアルデヒドやケトン類との付加反応を検討することにした。このアルコールを酸で処理すればアルデヒドやケトンの3,4-bis(sulfenyl)penta-2,4-dienyl化が達成できる。そこで、原料となるブタジエン誘導体の合成を検討し、数種の新規なブタジエンを合成することに成功した。 そこで、交付者はまず、4-alkoxy-2-(methanesulfenyl)-1-(benzenesulfenyl)buta-1,3-dieneのリチオ化を検討した。種々の強塩基を検討したところ、n-BuLi/DABCO/-30℃で良好に反応が進行することが分かった。すばやく、アルデヒドを加えると付加した5-alkoxy-3-(methanesulfenyl)-2-(benzenesulfenyl)penta-2,4-dien-1-ol誘導体が得られた。そこで、このアルコールの加水分解を検討すると、SOCl_2/pyridienの条件のみ目的の2,4-ペンタジエナール化が進行することを見出した。この反応は数種のアルデヒドにおいても進行し、立体選択的にジエナール類を与えた。さらに交付者は4-alkoxy-1,2-bis(benzenesulfenyl)buta-1,3-dieneにおいても同様の付加-加水分解反応が進行し、3,4-bis(benzenesulfenyl)-penta-2,4-dienal類を与えることも見出した。 次に、このタンデム反応を検討した。まず、2-メタンスルフェニル誘導体を用いた2,4-ペンタジエナール化生成物に対してもう一度同じ反応を行なった。まだ、収率等の改善の余地はあるが、目的の3,7-bis(methanesulfenyl)-4,8-bis-(benzenesulfenyl)nona-2,4,6,8-tetraenal誘導体を立体選択的得ることに成功した。 今後、交付者はこのテトラエナール誘導体の物性、特に光に対する反応性について調べていく予定である。
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