研究概要 |
水を媒体とした環境調和型の新しい有機合成反応の開拓を目指し、それぞれ別の機能を有する複数個のキラル分子を種々の媒体中で反応時に混合・集合させ、多成分から不斉触媒を反応容器中で構築し、それを不斉反応に利用可能かどうかを検討した。その結果、以下の知見を得ることができた。 1)これまで利用してきたキラルな四級アンモニウム塩に代わる不斉有機分子触媒の探索を行い、チオ尿素がニトロンへのシアノ基やケテンシリルアセタールなどの求核付加反応を促進する効果があること、さらにはチオ尿素と3級アミンを併せ持つ化合物がニトロオレフインへのマロン酸エステル類の共役付加反応を高エナンチオ選択的に加速することを見いだした。特に、従来法では合成が困難であった4級炭素を有する化合物の合成にもエナンチオ選択性を低下させることなく適用可能であることから、種々の4級炭素構築にも利用可能であることが判明した。 2)昨年度開発したイリジウム触媒を用いた不斉アルキル化反応を利用して、エナンチオ選択的なα,α-2置換アミノ酸誘導体の合成を検討し、ホスファイトと硫黄原子を併せ持つキラル配位子が優れた反応促進効果を有することを明らかにし、さらに1置換アミノ酸合成よりもエナンチオ選択性は低下するものの(90%ee以上)α,α-2置換アミノ酸誘導体を最高80%ee以上のエナンチオ選択性で合成することにも成功した。
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