研究概要 |
1)キラル四級アンモニウム塩がミセル内で規則正しく取り込まれるように、キラル四級アンモニウム塩の適当な場所にアルキル側鎖、ポリエーテル側鎖を導入する手法を確立し、新規なキラル四級アンモニウム塩を四種合成した。水中不斉アルキル化反応を調べたが、立体選択性の向上は観測されず、ミセル内での四級アンモニウム塩の固定化は立体選択性や反応速度に無関係であることを明らかにした。 2)パラジウム触媒を用いたイミノグリシン誘導体の不斉アリル化反応をキラルなホスフィン配位子とキラルな4級アンモニウム塩共存下で行い二重不斉誘導が起こるかどうかを調べたが、立体選択性が低下するのみで生成物の作り分けには成功しなかった。しかし、イリジウム触媒を用いたアルキル化反応で高いエナンチオ選択性を示すキラル配位子を開発すると共に、キラルな4級アンモニウム塩ではなく、ただ単に求核剤の対カチオン種をカリウムとリチウムに変えるだけで、生成物の可能な4つの立体異性体のそれぞれを選択的に作り分けることに成功した。 3)イリジウム触媒を用いた不斉アルキル化反応を利用して、エナンチオ選択的なα,α-2置換アミノ酸誘導体の合成を検討し、ホスファイトと硫黄原子を併せ持つキラル配位子が優れた反応促進効果を有することを明らかにし、さらに1置換アミノ酸合成よりもエナンチオ選択性は低下するものの、α,α-2置換アミノ酸誘導体を最高80%ee以上のエナンチオ選択性で合成することにも成功した。 4)これまで利用してきたキラルな四級アンモニウム塩に代わる不斉有機分子触媒の探索を行い、チオ尿素がニトロンへのシアノ基やケテンシリルアセタールなどの求核付加反応を促進する効果があること、さらにはチオ尿素と3級アミンを併せ持つ化合物がニトロオレフィンへのマロン酸エステル類の共役付加反応を高エナンチオ選択的に加速することを見いだした。
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