研究概要 |
1.ラジカル閉環反応に汎用されるハロアルキンを基質とし、一電子還元剤としてインジウム(In)を用いて閉環反応を検討したところ、基質と試薬を室温下撹拌するだけという簡便な新規ラジカル閉環反応を開発することができた。Inによるラジカル環化反応はこれまでに全く報告例が無くオリジナルなものであり、反応条件を変えるだけでアトムトランスファー-5-エキソ閉環反応と還元的-5-エキソ閉環反応を区別する事が出来るという点で、これまでに例の無い興味深い反応といえる。 2.脂肪族ハロアルキンに比べて芳香族ハロアルキンは反応性に乏しくラジカル環化反応は困難であったが、反応溶媒をMeOHからDMFに変え、Inの酸化皮膜の除去の目的も兼ねて加えているヨウ素のかわりに臭化水素酸ピリジニウムペルブロミドを用いることで、芳香族化合物においても短時間で収率良くラジカル閉環反応を達成することができた。 3.反応成績体の利用として、アトムトランスファー-5-エキソ閉環体を経由するワンポット-鈴木-宮浦カップリング反応を達成することができた。この反応とラジカル環化反応を組み合わせることにより、オレフィンのZ体とE体の作り分けに成功した。さらに還元的-5-エキソ閉環体からは、電子不足オレフィンとのタンデム-1,4-付加反応による炭素鎖伸長反応や、還元的閉環体である二環性複素環化合物から誘導したアルコール体とデカヒドロイソキノリンやスルホンアミド誘導体を結合させることにより、代表的なHIVプロテアーゼ阻害剤サキナビルに匹敵する抗HIV活性を有する化合物を合成することができた。 4.さらにプロテアソーム阻害活性を有するTMC-95A, Bのフラグメント合成へも応用することができた。
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