研究概要 |
共有結合以外の結合を使って、分子に機能を持たせる超分子化学は近年ますます盛んに研究がなされている。しかしながら、共有結合以外の結合を使い実際に機能をデザインし得るのは、配位結合とアプロティックな溶媒中での水素結合のほぼ二種類であるといってよい。CH-π結合やπ-π相互作用などの微細な結合力は研究者が自由自在にデザインできるところまでには至っていないのが現状である。このような背景のもと、研究代表者はプロティックな溶媒中(望むらくは水中)での水素結合を駆動力にした分子認識に取り組んでいる。プロティックな溶媒中では溶媒自身が水素結合ドナー、アクセプターとして作用するため、目的とする分子同士を水素結合を駆動力とし会合・分子認識させることはきわめて困難な課題である。研究代表者はpH指示薬として広く利用されているフェノールフタレインを母核としクラウンエーテル構造を合わせ持つ化合物をホスト分子として既に合成し、ゲスト分子の様々な特徴をプロティックな溶媒中において読み取り、呈色化・可視化することを目的に研究を進めている。今回の科学研究費の交付を希望する期間内においては次の五つを目的として掲げ研究を開始した。(1)トリアミン類をゲストとした長さ認識および呈色錯体の構造の確定、(2)ジペプチド類の配列の呈色認識、(3)不斉の呈色認識、(4)グアニジノ基を認識するホスト分子の創製、(5)ダブル・ロタキサン型呈色認識。このうち(1)〜(3)についてまかりなりにも目的を達成する事ができ、既に以下の論文として発表済みである。(1)についてはOrg. Lett. 2001, 3, 4067-4069、(2)についてはOrg. Lett., 2002, 4, 2313-2316、(3)についてはOrg. Lett. 2001, 3, 4071-4073。詳細はそちらを参考されたい。
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