研究概要 |
研究代表者はpH指示薬として広く利用されているフェノールフタレインを母核としクラウンエーテル構造を合わせ持つ化合物をホスト分子として合成し、ゲスト分子の様々な特徴をプロティックな溶媒中において読み取り、呈色化・可視化することを目的に研究を進めている。今回の科学研究費の交付期間内においては(1)ジペプチド類の配列呈色認識、(2)温度変化に伴うアルカリ金属とホスト化合物の呈色挙動(3)不斉呈色認識の三点について成果を挙げることができた。(1)400個のジペプチド類の内LysをC末端に持ち更にN末端が小さい6ジペプチドを認識し紫色に呈色する機能を持つ事を見出した。また(2)温度変化に伴うアルカリ金属とホスト化合物の呈色挙動についてはNaOH, KOHで紫に呈色するホスト分子の挙動が温度の変化により逆転する事を見出した。すなわち低温にするにつれて、ナトリウムでは色が濃くなり、カリウムでは色が薄くなるということが判った。生体ではナトリウムとカリウムは逆の役割を担っているが、人工のホスト分子で逆の挙動を示す最初の例である。そり原因はホスト化合物とアルカリ金属イオンは1:3の呈色錯体と1:2の無色錯体の少なくとも二種類の錯体を形成し、さらにその両者の比が温度を変化させることで劇的に変化するためであることがわかった。(3)不斉呈色認識:このテーマではアラニン誘導体の不斉の違いをはっきりとした色の強弱で読み取ること成功していたが、さらに他のアミノ酸誘導体としてβ-アミノアルコール類の不斉呈色識別も可能である事を見出した。さらに興味あることにβ-アミノアルコール類の不斉呈色においては、温度によって呈色の強度が逆転するという現象を見出すことができた。理論的には起こりうる現象ではあるが実際に観測されることは極めてまれなことである。
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