独自のエンアセタール類の分子内ハロエーテル化反応により生成するキラルなオキソニウムイオン種を利用する不斉識別手法の展開と応用を目的として、以下の研究を行った。 まず、光学活性なジオールを組み込んだシクロペキサジエンアセタールの分子内ハロエール化によるジエンの不斉非対称化の天然物合成への応用として、ステモナアルカロイド類の合成研究を行った。その結果、天然のステニンとC-N結合の立体化学だけが異なる9a-エピ体の合成に成功し、更に天然のステニン合成の最終段階にある。またその合成中間体であるシクロヘキセン誘導体から、N-SMase阻害作用を持ち、新しいタイプの鎮痛薬として期待されるスキホスタチンのヒドロキシアミノ側鎖を加えたエポキシシクロヘキセノン部の合成に成功した。尚、これらは環状の対称ジエンの非対称化を鍵反応としている。そこで次に、この反応を鎖状の対称ジエンアセタールで行ったところ、2回の分子内ハロエーテル化反応(ドミノ型分子内ハロエーテル化反応)が二個のオレフィンに連続して起こり、多連続不斉中心を持つテトラヒドロフラン環が立体選択的に得られた。得られた化合物は2個のハロゲン原子を含んていたが、立体環境の差を利用して、選択的に一方のハロゲン置換炭素上で反応し、種々の求核種を導入することにも成功した。また還元的脱ハロエーテル化反応も一方のハロゲン部で選択的に起こすことが出来、天然の多く存在する光学活性テトラヒドロフラン天然物合成の足掛かりをつかむことができた。
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