研究概要 |
1.分子内ヒドロアシル化反応の研究 光学活性ロジウム錯体を用いるエナンチオおよびジアステレオ選択的3,4-ジ置換五員環形成反応について詳細に検討を加え、その高い立体選択性実現に成功した。中でも、当初計画したエナンチオ特異的触媒反応の実現については、その一般化には至っていないが、特定の反応系では生起することを明らかにすることができた。これらの研究成果はCurrent Org.Chem.,7,2003に掲載予定である。 2.分子間ヒドロアシル化反応の研究 アルデヒドとオレフィンとの分子間ヒドロアシル化反応は、従来、極めて過酷な反応条件下でのみ、その反応の生起が知られていた。我々は、基質としてサリチルアルデヒドを用い、オレフィンとして1,5-ジエンを用いることで、Wilkinson触媒での分子間ヒドロアシル化反応が室温かつ15分という短時間で進行し、定量的収率にて生成物を与えることを見い出した。本反応の詳細について検討し、以下の諸点を明らかにできた。 1)基質である芳香族アルデヒドの隣接位(オルト位)にフェノール性水酸基が必須であること。 2)ジエンとして1,5-ジエンのみならず、1,4-ジエンおよびノルボルナジエンでも反応が生起すること。 3)添加剤としての塩基ならびに溶媒効果が反応加速に著しい影響を与えること。 4)成績体における位置異性体比については、用いる触媒の量、基質の種類、ジエンの種類等、多種の要因の影響を受けること。 5)重水素化アルデヒドを用いる反応機構の検討の結果、本反応では、ジエンが配位したアシルロジウムヒドリド中間体と反応原系との平衡速度が極めて速いことが判明した。 以上の研究成果については、現在、投稿中である。 また、本反応研究の展開として推進中の「反応の不斉化」研究についても、光学活性ロジウム錯体を用いることのみでは好ましい結果は得られなかったが、添加剤を種々検討した結果、現在のところ、最高60%e.e.の成績体を得ることに成功している。今後の展開に期待するところである。
|