研究概要 |
今年度は、ジペプチドあるいはデプシペプチドの加水分解抵抗性イソスターの合成を指向して、4位にジフルオロ基、2位にオレフィンを有する基質と、アルキルリチウム由来の銅試薬やアルキルアルミニウムー銅(I)を用いて、2位にアルキル置換されたフルオロオレフィンの立体選択的合成について詳細に検討を行った。 1.4,4-difluoro-5-hydroxyallylic alcoholに対する銅試薬によるアルキル化を検討したところ、出発原料がE-体とZ-体の場合で、その反応性や生成物の2位と5位のジアステレオ選択性には相違が見られたが、いずれもS_N2'型のアルキル化が進行し、高いZ-選択性で目的とするフルオロオレフィン誘導体が得られた。 2.(E)-4,4-difluoro-5-hydroxy-2-alkenoateを基質とした場合、用いる銅試薬により生成物が異なっており、銅試薬により反応のメカニズムも異なることが示唆された。CuI・2LiCl-Me_3Alの場合には、フッ素とOH基がAlに配位した5員環中間体を経由してalkyl-transfer反応が進行していると考えられるが、詳細なメカニズムの解明は今後の課題である。 3.ペプチドイソスターへの変換を検討し、1級アルコールをカルボキシル基へ、5位のOH基をアミノ基へ変換する方法を確立した。現在、プロテアーゼ阻害剤などへの(Z)-フルオロオレフィン構造の導入を検討中である。 4.γ,γ-ジアルコキシアリルジルコニウム種とイミン類との反応を検討し、銅(I)塩共存下反応が進行してアミン誘導体が得られることを明らかにした。今後、含フッ素体への応用について検討する予定である。
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