研究概要 |
本研究は、フルオロオレフィンがアミド結合に類似する性質を持ちかつ酵素的加水分解に抵抗性を示すことから、活性の増強、安定性の増加、疎水他の増大などを意図して(Z)-フルオロオレフィンペプチドイソスターの効率的、立体選択的合成と応用を検討したものである。(E)-4,4-ジフルオロ-5-ヒドロキシ置換のα,β-不飽和エステルやアリルアルコールと有機銅試薬との反応を検討し、フッ素が還元的に脱離した2-アルキル化体が収率良く得られることを見出した。特にアリルアルコール体を基質とした場合には、銅(I)塩共存下、R_3A1のアルキルトランスファーによりS_N2'型の反応が進行し、オレフィンの立体配置がZで、2,5位の相対配置がsynの2-アルキル化体が高い選択性で得られた。基質の立体化学や、置換基の影響についても検討し15位水酸基と4位フッ素の金属アルコキシドへの配位による5員環環状錯体の形成が、反応の進行と立体選択性の発現に重要な役割を果たしていることを見出した。生成物の1級水酸基は、エピメリ化を伴うことなくカルボキシル基へ変換可能で、5位の二級水酸基はメシレート、続いてアジドとするone-pot法でアミノ基へ変換できた。求核剤としてバイドライド試薬を用いる同様のSN2'型の還元反応についても併せて検討し、これらにより含フッ素ペプチドイソスターの合成を可能にした。 さらに、関連反応として、末端ジフルオロアルケニル活性メチン化合物の、分子内環化反応について検討し、フッ素置換環状化合物の新規な合成法を開発した。 また、ジルコニウムを用いるペプチドイソスターの合成法の開発を指向して、γ,γ-ジアルコキシアリルジルコニウム種とイミンとの反応について検討を行い、一価の銅塩存在下、γ,γ-ジアルコキシアリルジルコニウム種のγ位でイミンが反応したホモアリルアミン誘導体が生成する事を見いだした。
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