研究概要 |
昨年に続き,高等植物由来のステロイド配糖体やフェノール性物質のうち,アポトーシス誘導の標的分子に作用してアポトーシスを誘導する化合物を探索し,アポトーシス誘導分子標的薬剤のシードを見出すことを目的として研究を実施した.本年度得られた研究成果の概略は以下の通りである. 1.キンボウゲ科Helleborus nigerの地下部よりβ-ecdysoneをHL-60細胞毒性物質(IC50 0.2μg/mL)として高い収量で単離した.Ecdysone類の細胞毒性に関する知見はこれが初めてであり,また,HL-60細胞に対しても既存の抗がん剤であるエトポシドと同程度の強い活性を示したため,ヒト培養細胞パネルスクリーニングを実施した.その結果,β-ecdysoneは,脳腫瘍細胞系,肺がん細胞系に対して感受性が高く,胃がん細胞系,大腸がん細胞系に感受性が低いというdifferential cytotoxicityが認められた.この活性スペクトルは既存の抗がん剤や抗腫瘍活性物質と一致せず,新規作用メカニズムを有する抗腫瘍活性物質として期待されたため,現在,アポトーシス誘導活性の他,ブロテインキナーゼ阻害活性,トポイソメラーゼ阻害活性,チューブリン阻害活性ならびにxenograftによる抗腫瘍活性を検討中である. 2.漢方生薬である「仙茅」が中国においてがんの治療に用いられているという伝承的背景から「仙茅」のHL-60細胞毒性成分を検索したところ,新規シクロラノスタン配糖体ならびにそのアグリコンを活性物質として同定した.現在,HL-60細胞以外の腫瘍細胞に対する細胞毒性と作用メカニズムを検討中である.
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