研究概要 |
本研究は,高等植物由来のステロイド配糖体やフェノール性物質のうち,アポトーシス回避機構を獲得した腫瘍細胞に対して,アポトーシス誘導の標的分子に作用してアポトーシスを誘導する化合物を探索し,アポトーシス誘導分子標的薬剤のシードを見出すことを目的として実施したものである.本年度得られた研究成果の要約は以下の2点である. 1.ヨーロッパで古くより民間薬として用いられてきたキンポウゲ科Helleborus orientalisの根茎のメタノール抽出エキスより,配糖体画分を調製し,シリカゲルカラムクロマト,HPLCにより精製を行った.その結果,4種の新規ステロイド配糖体が単離され(1-4),それらの化学構造をスペクトル解析と化学誘導により決定した.化合物1と2はビスデスモシド型のフロスタノールサポニン,3と4はビスデスモシド型のフロスピロスタノールサポニンである.これらについて,HSC-2ヒト口腔扁平上皮癌細胞に対する細胞毒性活性試験を行ったところ,3が既存の抗癌剤であるエトポシドより強い細胞毒性活性を示した.フロスピロスタノールサポニンの天然からの単離・構造決定例は少なく,また,その活性に関する報告も皆無であることから,3についてはさらにin vivoでの活性と活性メカニズムについて検討していく価値のある化合物と考える. 2.芳香精油20種について,HL-60白血病細胞に対する直接的な細胞毒性活性を検討した. その結果,サンダルウッドとレモングラスの精油がそれぞれIC_<50>2.1μg/mL,4.8μg/mLという強い活性を示した.芳香精油の細胞毒性に関する報告はほとんど無く,これら2種の詳細な活性と活性成分の単離についてさらに精査する予定である.
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