研究概要 |
本年度は、まず、リパーゼTLを用いた光学分割反応として、C3ユニットを有するグリセロールに着目、2つの1級水酸基を異なった保護基で保護した2級アルコールを合成、それらの光学分割を検討した。その結果、一方をp-メトキシベンジル基、他方をTBDMS基で保護したグリセロール誘導体に酢酸ビニル存在下、リパーゼTLを作用させることにより、光学純度の高いアセテート及びアルコールを得ることが出来ることを見いだした。更に、脱保護の順番を変えることで、いづれからも所望の同一の立体配置を有するアルコールに誘導できた。現在、lysophosphatidic acid及びそのアナログ合成を検討している。一方、リパーゼTLが2級カルビノール炭素の立体を高度に認識していることを利用し、複数の2級水酸基を持つ天然物の位置選択的なアセチル化が可能ではないかと考えた。そこで、本年は、シソ科rabdosia excisaより原料となる種々のポリヒドロキシエントカウレン型ジテルペン類を11種単離した。尚、単離した天然物に強力な抗腫瘍活性が見出されたことから、それらの構造活性相関研究を考慮に入れたアナログ合成も検討し、1,14-ジヒドロキシエントカウレン型ジテルペンからエントアビエタン型ジテルペンへの光延反応条件下での効率的変換反応を見出した。又、得られた新規エントアビエタン型ジテルペンが強い細胞毒活性を有していたことより、抗腫瘍剤開発におけるリード化合物を見出したことになる。次に、強力なアポトーシス誘導活性を有する環状デプシペプチドGE3及びアナログ合成においては、昨年度リパーゼTLを用いた光学分割反応を経て合成したピペラジン酸の両鏡像体の多量合成、残る4つの構成アミノ酸の合成を達成した。
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