研究概要 |
窒素ラジカルを利用した有機合成反応のほとんどは,エントロピー的に有利な分子内5員環形成反応に関するものであり,窒素ラジカルのアルケン類への分子間付加反応に関しては従来あまり知られていなかった.本研究は,N-トシルヨードアジリジン誘導体をアザホモアリルラジカル前駆体として用いる種々のアルケン類との分子間[3+2]付加環化反応について検討を行なったものである.以下に平成14年度の研究成果を記述する. 1.N-トシルヨードアジリジンと種々のアルケン類とのラジカル[3+2]付加環化反応 N-トシルヨードアジリジン誘導体をEt_3Bで処理するとアリルアミジルラジカル(アザホモアリルラジカル)種が発生し,アルケン類の共存下ではヨードアトムトランスファー型のラジカル[3+2]付加環化反応が効率良く進行することを見いだした.本反応は,エノールエーテルやケテンアセタール等の電子豊富アルケンを用いた場合特に収率良く進行し,官能基化されたピロリジン誘導体を与える.また,アリルシランや1,1-ジ置換アルケンとの反応も中程度の収率で進行した.一方,1-アルケンとの反応では収率の大きな低下が見られ,アリルアミジルラジカル種の反応性がアルケンの電子密度に大きく依存することを明らかにした. 2.ヨードメチルシクロプロパンと種々のアルケン類とのラジカル[3+2]付加環化反応 本研究は窒素ラジカルの反応ではないが,関連反応として類似のヨードアルキル3員環化合物であるヨードメチルシクロプロパン誘導体を用いて種々のアルケン類との反応を検討した.すなわち,ヨードメチルシクロプロパン-1,1-ジカルボキシレートをEt_3Bで処理するとアリルマロネートラジカル種が発生し,アルケン類の共存下ではヨードアトムトランスファー型のラジカル[3+2]付加環化反応が効率良く進行することを見いだした.本反応は種々のアルケン類に適用可能であり,シクロペンタン類の効率的な合成方法を提供するものである.
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