研究概要 |
本研究は,N-トシルヨードアジリジン誘導体を種々のアザホモアリルラジカル(2-アルケニルアミジルラジカル)前駆体として用いるアルケン類との分子間ラジカル[3+2]付加環化反応の開発を目的に行なっているものである.以下に平成16年度の研究成果を記述する. 1.不斉ラジカル[3+2]付加環化反応を利用した光学活性オクタヒドロインドール誘導体の合成 昨年度申請者は,光学活性双環性ヨードアジリジン誘導体を用いる不斉ラジカル[3+2]付加環化反応について報告した.本反応の生成物(光学活性オクタヒドロインドール誘導体)は,種々の天然アルカロイドの有用な合成中間体になり得るものである.しかしながら,ラジカル反応は一般に反応スケールをアップすると化学収率の極端な低下が見られ,天然物合成を考える上で必ずしも実用的ではなかった.本年度は本反応の実用性を明らかにする目的で,反応のスケールアップについて検討を行った.その結果,反応溶媒や反応濃度を詳細に検討することにより,最大5mmolまでの反応は化学収率や立体選択性を損なうことなく進行することを明らかにした. 2.ヨードメチルシクロプロパン誘導体とジエンならびにエンイン類のラジカルカスケード反応 ヨードアルキル3員環化合物を用いる関連反応として,申請者は環上に二つの電子吸引基を有するヨードメチルシクロプロパン誘導体をラジカル前駆体とするヨウ素原子移動型[3+2]付加環化反応を報告している.すなわち,当該ヨードメチルシクロプロパンは良好なアリル活性メチンラジカル(求電子的ホモアリルラジカル)前駆体であり,トリエチルボランの存在下,種々のアルケン類との反応により良好な収率ならびに立体選択性でヨードメチルシクロペンタン誘導体が得られることを明らかにしている.本年度は,アルケン類としてジエンやエンイン類を用いたラジカルカスケード反応について検討した.その結果,ジエンやエンインとの反応では,ラジカル[3+2]付加環化に続き5-exo-環化反応が効率良く進行し,ビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体が一段階かつ良好な収率で得られることを見い出した.
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