研究概要 |
本研究における結果は以下の通りである。 1.甘遂より分離した化合物 10種新規化合物を含む21種のingenol型ジテルペン、3種新規化合物を含む5種のjatrophane型ジテルペン、5種新規化合物を含む7種のeuphane/tirucallane型トリテルペン、5種のステロイド、1種のクマリン及び1種の脂肪酸の合計38種の化合物を明らかにした。 2.上記の化合物の中、ingenol型ジテルペン類はもっとも強い細胞分裂抑制活性を示した。また、これらの化合物は細胞分裂を抑制し、細胞は生存しているという特性が認められた。 3.Ingenol型ジテルペンについてMMT、LC540及び3T3細胞に対する増殖抑制作用を検討した結果、20-O-(2'E,4'Z-decadienoyl)ingenol(2)は正常細胞である3T3細胞に増殖抑制作用を示さず、乳癌細胞MMTに対し、選択的な抑制作用を示した。 4.ingenol型ジテルペン3-O-(2,3-dimethylbutanoyl)-13-O-dodecanoylingenol(20)はJurkat、HSC-2両細胞に対して著しく増殖抑制活性を示した。また、作用機序の検討において、20はアポトーシス誘導能を示し、その作用は初期アポトーシスを誘導し、後期アポトーシスへと移行させることが認められた。 5.以上の結果、甘遂中のingenol型ジテルペンは、細胞分裂抑制活性と癌細胞の初期アポトーシスを誘導することから、細胞傷害性を示すと考えられる。本植物中のingenolジテルペンには新しい作用機序が認められる抗癌作用物質で、抗癌剤開発のリード化合物として興味深い結果が得られた。
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