研究概要 |
平成14年度に引き続き,アーユルヴェーダ生薬の抽出エキスを作製し,各種スクリーニング試験を経て,肥満あるいは糖尿病予防効果に有望な素材を探索した.その結果,アーティチョーク(Cynara scolymus L.,葉部)のMeOH抽出エキスにオリーブ油負荷マウスにおける血清中中性脂質上昇抑制作用を見出した.活性を指標に分離・精製したところ,guaiane型セスキテルペンのcynaropicrin, aguerin Bおよびgrosheiminが活性成分として見出されるとともに,新規セスキテルペン配糖体cynarascoloside A-Cを単離・構造決定した.さらに,これら活性成分の作用メカニズムのひとつとして,胃排出能抑制作用が認められた. また昨年度からの継続研究として,Salacia属植物の機能性探索の一環として,Salacia chinensis(幹部)の含有成分を探索したところ,S.chinensis含水MeOH抽出エキスから7種の新規トリテルペンsalasone A-E,salaquinone A,Bおよび2種の新規セスキテルペンsalasol A, Bを単離・構造決定するとともに,含有トリテルペンに糖尿病合併症の白内障や神経障害に関与するポリオール代謝系の律速酵素であるaldose reductaseに対する阻害作用やラジカル消去活性を見出した.一方,3種のSalacia植物(S. reticulata, S.oblongaおよびS.chinensis)の各抽出エキスについて,ショ糖やブドウ糖負荷ラットにおける血糖値上昇抑制作用,α-glucosidaseおよびaldose reductase阻害活性,AGEs産生抑制活性,ラジカル消去活性およびNO産生抑制活性試験を実施するとともに,タイ国におけるS.chinensisの植生調査をα-glucosidase阻害活性を指標に実施した. さらに,糖尿病性腎症を含めた糖尿病の合併症の成因に深く関与している蛋白の非酵素的糖化によって生成されるアマドリ化合物や終末糖化産物(AGEs)の生成抑制活性およびラジカル消去活性について,我々が保有するflavonoid化合物ライブラリーについてスクリーニングを実施した.その結果,活性発現の必須構造や構造活性相関を明らかにするなど,平成15年度の当初計画についてほぼ達成したものと考えられる.
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