研究概要 |
水溶液中でペプチドの固相合成を行うために水溶性のアミノ保護基、2-[phenyl(methyl)sulfonio]-ethoxycarbonyl基(Pms基)を考案し、その導入試薬として2-[phenyl(methy1)sulfonio]ethyl-4-nitrophenylcarbonate (Pms-ONp)を開発したが、Pms-ONpとアミノ酸を反応させてPms-アミノ酸を合成する際に遊離する4-nitrophenolは環境問題からは好ましくない試薬である。そこで4-nitrophenolより毒性の少ないN-hydroxysuccimide (HOSu)とN-hydroxy-5-norbornene-endo-2,3-dicarboximide (HONb)に注目し、Pms-OSuとPms-ONbを合成した。Phenylthioethoxycarbonylchloride (Pte-Cl)とHOSu(またはHONb)を反応させPte-OSu(またはPte-ONb)を合成し、次いでmethyl iodideとsilver tetrafluoroborateを反応させPms-OSu(またはPms-ONb)を得た。Pte-OSu, Pte-ONbともに水溶性の高い、そして反応性の高い試薬であったが、安定性があまり良くなく、精製を繰り返すと逆に分解するなどの欠点があったが、これら試薬を使って種々の側鎖を持つ側鎖保護Pms-アミノ酸を合成することができた。 水溶液中のみならず、場合に応じて有機溶媒中でも反応できる保護アミノ酸としてethanesulfonyl-ethoxycarbonyl基(Esc基)を考案した。2-ethanesulfonylethanolを2-ethanesulfonylethyl chloro-formate (Esc-Cl)に変換後アミに酸と反応させ、Esc-アミノ酸をえた。しかしながらEsc-Clは不安定で分解しやすいため、より安定なEsc基導入試薬を検討した。2-ethanesulfonylethanolに4-nitro-Phenyl chloroformateを反応させ、ethanesulfonylethyl-4-nitrophenyl carbonate (Esc-ONp)とした後、これとアミノ酸を反応させEsc-アミノ酸を得ることができた。Esc-アミノ酸は水溶性を示すものが多く、これを用いて水中での固相法によりロイシンエンケファリンを合成することに成功した。また有機溶媒中(dimethylformamide)でのEsc基の脱離条件を検討し、水中での脱離条件との比較を行った。有機溶媒中でもEsc-アミノ酸をもちいてロイシンエンケファリンの合成に成功し、Esc基が水中での反応でも有機溶媒中の反応でも保護基として有用であることを示した。
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