新規硫酸化多糖による細胞増殖因子の活性調節に関与する分子解析

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14572029
• 研究機関: 千葉大学
• 研究代表者: 戸井田 敏彦 千葉大学, 大学院・薬学研究院, 助教授 (60163945)
• キーワード: アカラン硫酸 / 抗腫瘍活性 / 増殖因子 / 免疫系 / 表面プラズモン共鳴

研究概要

アフリカマイマイより単離したアカラン硫酸の、抗腫瘍活性を調べる目的で、ラットに対する腫瘍組織の移植実験を行った。用いたアカラン硫酸は、分子量29000、硫酸化度は二糖単位に1個の硫酸エステルを含み、ペプチド部分を含まない。また、腫瘍細胞が産生する増殖系に関与するタンパク質、特に塩基性の増殖因子と、免疫系の関与を調べる目的で、Th1/Th2に関与するT細胞が産生するサイトカイン類の検索を行っている。現在アカラン硫酸の抗腫瘍活性が、免疫系細胞を介して発現するのか、直接腫瘍細胞に働く増殖因子に働くのかの二点に絞られてきたため、焦点を絞り込んで研究を遂行している。すなわち、アカラン硫酸をリガンドとするアフィニティーカラムを申請者が作成し、腫瘍組織から調製したホモジネートをカラムにかけ、特異的に吸着する物質を追求している。その結果、他のグリコサミノグリカンをリガンドとした場合とは明らかに異なり、アカラン硫酸に対してのみセルロプラスミン、ホスホリパーゼCの2種類のタンパク質が結合することを明らかにした(未発表)。
セルロプラスミンはがん細胞が特異的に多量に産生するタンパク質として知られており、現在表面プラズモン共鳴測定装置によりその相互作用について調べている。免疫系細胞との相互作用については、現在実験系を検討中である。今後、セルロプラスミンの単離精製、蔵相因子の単離精製も視野に入れて検討していく予定である。また、MALDI-TOF質慮分析計を用いた個々のタンパク質の同定法についても検討を開始する。

研究成果

• [文献書誌] Sakai S, Akiyama H, Toyoda H, Toida T, Maitani T, Imanari T.: "Effect of chondroitin sulfate on murine splenocytes sensitized with ovalbumin"Immunol Lett. 84. 211-216 (2002)
• [文献書誌] Islam T, Butler M, Sikkander SA, Toida T, Linhardt RJ.: "Further evidence that periodate cleavage of heparin occurs primarily through the antithrombin binding site"Carbohydr Res. 337. 2239-2243 (2002)
• [文献書誌] Linhardt RJ, Toida T.: "Tech.Sight. Capillary electrophoresis. Ultra-high resolution separation comes of age"Science. 298(5597). 1441-1442 (2002)
• [文献書誌] Yu G, Linhardt RJ, Toida T, Shadid H, Ferro V, Palermo MC, Podger D.: "Preparation and anticoagulant activity of the phosphosulfomannan PI-88"Eur J Med Chem. 37. 383-391 (2002)
• [文献書誌] Ye S, Luo Y, Lu W, Linhardt RJ, Toida T, Pelletier H, McKeehan WL.: "Structural basis for interaction of FGF-1, FGF-2, and FGF-7 with different heparan sulfate motifs"Biochemistry. 40(48). 14429-14439 (2002)
• [文献書誌] Sakai S, Toyoda H, Toida T, Imanari T, Linhardt RJ: "Pretreatment procedure for the microdetermination of chondroitin sulfate in plasma and urine"Anal Biochem. 302(2). 169-174 (2002)