研究概要 |
まず,超微量のビタミンD化合物を同定,定量するためのLC/APCI-MS用検出指向誘導体化法を開発した.すなわち,正イオン検出APCI-MSにおいては,ビタミンD化合物をCookson型試薬の一種である4-[2-(6,7-dimethoxy-4-methyl-3-oxo-3,4-dihydroquinoxalyl)ethyl]-1,2,4-triazoline-3,5-dione(DMEQTAD)との付加体に導くことにより,極めて高感度な応答(検出限界:数ピコグラム)が得られることを見出した.また,側鎖上にビシナールジオール基を有する代謝物の負イオン検出APCI-MS用の新規誘導体化試薬,[3-(2-nitro-4-trifluoromethylphenyl)aminophenyl]dihydroxyboraneを開発した. 続いて上記のDMEQTADを用いる誘導体化-LC/MSによる1α-ヒドロキシビタミンD_3[lα(OH)D_3]定量法を開発した.本薬物は,骨粗鬆症をはじめ各種骨疾患治療薬として20年以上も前から臨床に供されているものの,その体内挙動はほとんど解明されていなかった.そこで,開発した方法をヒト血漿中1α(OH)D_3分析に適用し,本薬物の体内挙動を初めて明らかとした. さらに同様の手法を用いて生理的条件下のヒト尿中ビタミンD_3代謝物の存否について検討した.その結果,尿中に24,25-ジヒドロキシビタミンD_3に加え,血中では極めて微量でしか存在しない23,25-ジヒドロキシビタミンD_3及びその24位ケト体のグルクロニドが検出され,23位の水酸化とそれに続くグルクロニデーションがビタミンD_3の排泄に重要な役割を果たしていることが明らかとなった.一方,3位異性化代謝物は検出されず,生理的条件下では本代謝経路がビタミンD_3の排泄にほとんど寄与していないことを示す結果を得た.
|