研究概要 |
(1)生体内ビタミンD化合物及び代謝物の動態解析のための高感度LC/MS分析法を開発した.すなわち,電子親和性原子団を有する化合物が負イオンモードの大気圧化学イオン化(APCI)にて効率的に電子を捕獲しイオン化することに着目して,4-(4-nitrophenyl)-1,2,4-triazoline-3,5-dioneを誘導体化試薬として用いるLC/電子捕獲APCI-MS分析法を確立した.本法をヒトにおける循環型代謝物である25-ヒドロキシビタミンD_3[25(OH)D_3]分析に適用すると,4pgのそれが検出可能であり,感度の点において市販のRIAキットを凌駕するものであった.また,血清分析に応用したところ,わずか20μlの試料で再現性良く25(OH)D_3が定量可能で,スループットの面でも満足し得る結果が得られた. (2)先に報告者らは,24,24-ジヒドロキシビタミンD_3[24,25(OH)_2D_3]の3位異性化が,肝のサイトゾル画分に存在する酵素により触媒され,補酵素としてNAD及びNADPHを要求することを見出しているが,これを他のステロイド(例えば強心性ステロイド)の水酸基におけるヒドロキシステロイド脱水素酵素による異性化と比較すると,酵素の存在部位や反応条件など共通する点が多い.そこで,ビタミンD化合物も本酵素により3位水酸基が異性化されるとの仮説を立てて検討したところ,24,25(OH)_2D_3では3α-及びβ-ヒドロキシステロイド脱水素酵素のいずれでも3位異性化が起こることが明らかとなった.また,3-epi-24,25(OH)_2D_3もこれらの酵素の基質となり,24,25(OH)_2D_3が生成することが判明した.さらに,3位にオキソ基を有する化合物も単離し,本異性化反応が脱水素と還元の2段階で進行することを強く示唆するデータを得た.
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