研究概要 |
本年度は,最初に銅フタロシアニン誘導体固定化シリカゲル(Cu-PCS_D)カラムの基材であるaminopropyl silica gel Develosil-NH_2の残存アミノ基の影響を検討した. Cu-PCSの固定化量を考慮すると80%以上のアミノ基が残存している.そこで,methylsulfonyl chlorideを用い,アミノ基のマスキングを行った.その結果,順相系移動相では,マスキングを行ったカラムにおいて3環以上のPAHの保持時間がわずかながら短くなり,残存アミノ基もPAHと弱いながらも相互作用していることがわかった.しかし,Cu-PCSの固定化量の影響の方が大きいため,マスキングなしでも,順相系移動相中でPAHの分離に利用可能であると考えた.更に,Cu-PCS_D、カラムを用い,順相系移動相において米国環境保護局により規制されている2〜6環の17種の多環性芳香族炭化水素(PAH)の分離を試みた.単純なn-Hexaneのみを移動相とすると,5環以上のPAHの溶出が遅く2時間以上かかり,分離も不十分であった.n-Hexaneにethylacetate(20%)を加え移動相としたが,同様な結果であった.そこで,移動相を,n-Hexaneとchloroformの混液としてグラディエント溶出を試みた.その結果,試料注入後15分まで100% n-Hexaneのみを通液して,15分からchloroform濃度を20%まで上昇させ,30分以降に100% chloroformに変化させる段階的グラディエント溶出を行うと,AnthraceneとPyreneを除いて約40分で17種のPAHをほぼ分離できることがわかった.これらのことより,Cu-PCS_Dカラムを逆相系移動相だけでなく,順相系移動相でもPAH分離ができる充填剤として開発できた.
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