研究概要 |
表題の目的のため,先ず,M-PCS_D(M=Cu^<2+>,Ni^<2+>)カラムを用い,無極性移動相中で置換基を持たない4環までのPAHsが分離可能かどうか検討したところ,芳香環の数に応じて保持時間は長くなり,PAHsの分離ができることがわかった。そこで,無極性移動相中での分離挙動を極性移動相中での分離挙動と比較,シリカゲル上のM-PCS固定化量の影響,移動相にπ電子を持つ化合物を加えた際の影響等を検討したところ,M-PCS_DとPAHsとの無極性移動相中での相互作用は主にシリカゲル上に固定されたM-PCSのπ電子とPAHsのπ電子との相互作用であることを明らかにできた。次に,中心金属の影響を検討するため,中心金属を持たないH_2-PCS_Dカラムも調製し,中心金属の影響を検討した。4環のPAHsを試料として検討したところ,保持係数k値は,Ni->Cu->H_2-の順となり,中心金属もPAHsとの相互作用に大きく関わっていることがわかった。更に,π電子の関与する相互作用を持つ市販カラムPYEカラムとNPEカラムを用いて無極性溶媒中でのPAHsの分離挙動を比較したところ,Cu-PCS_Dカラムでは,PYEカラムと同様に主にπ電子の関与する相互作用が働き,Ni-PCS_Dカラムでは,それに加えてπ電子のNiへの配位など別の相互作用も加わっていることがわかった。ついで,無極性移動相でのM-PCS_Dカラムの応用として,先ず,医薬品への応用としてステロイド化合物の分離を検討した。その結果,n-Hexane-クロロホルムを移動相とすれば,ステロイド化合物の分離にも利用できることもわかった。更に,米国環境保護局の規制する17種のPAHsもn-Hexane-クロロホルムを移動相とするグラディエントHPLCで分離できることがわかった.以上のように,順相系HPLC用カラムとしてM-PCS_D(M=Cu^<2+>,Ni^<2+>)カラムを開発できた。
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