研究概要 |
本研究は標的生体高分子に二本鎖DNAを選び、光学活性なジアミンから誘導される二核鉄錯体による二本鎖DNAの目的位置を選択的に切断する人工制限酵素の開発を行い染色体DNAの機能制御を目指す. 1,8-anthracenedialdhydeとN',N'-dipyridylmethyl-R,R-cyclohexane-1,2-diamineとから誘導される光学活性な複核配位子1,8-(N-anthranylmethyl)-bis(N',N'-dipyridylmethyl-R,R-cyclohexane-1,2-diamine)(1)を合成した. 次に1のプラスミドpUC19DNAの切断能について検討した.条件:空気下,鉄(III)塩をモル比1:2でよく混ぜたもの又は鉄(III)塩のみをそれぞれDNAの50.0mM Tris Borate buffer (pH 8.1)溶液に添加し,すぐにH_2O_2(酸化剤)を加え,37℃で60minインキュベートした.その後,反応停止剤として0.5M EDTA bufferを加え,エチジウムブロマイド含有1.0%アガロースゲルを用いて電気泳動を行った.蛍光強度から,Form I, Form II,およびForm IIIの生成比を求めた. 0.53μgのDNAに対して,1の濃度を1〜10μMまで変化させたところ,1の濃度が8μMとき、FormIは完全に消失しForm II(84%)とForm III(6%)が生成することがわかった.7μM以下の濃度ではForm I(13%),Form II(84%)とForm III(3%)の割合で切断した.コントロール実験としてFe(III)イオンで行なったところ,Form IIIは生成しなかった. これらの結果から,1はプラスミドpUC19DNAを酸化的に切断することがわかった.
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