研究概要 |
インフルエンザAウイルスのヘマグルチニン(HA)はウイルスが最初に宿主細胞膜上の受容体に結合するのに必須の糖タンパク質である。新型のインフルエンザウイルスとして注目されているH5型HAの高次構造をX線結晶解析により決定し、その構造機能相関を目的として、Duckから分離されたA/Duck/313/4/78(H5N3)株のHAの精製、結晶化を行った。ウイルスからのHAの抽出にはブロメライン処理を用いた。電気泳動およびウエスタンブロット法によりHAの純度および3量体形成を確認した。先の研究結果からPEG6000を沈殿剤とする系で結晶化を行った。しかしながら、得られる結晶の形状が不規則なためなど、この条件でX線回折実験に適当な結晶を得ることは困難であった。ミクロシーディング法および各種添加剤の添加による結晶化条件検索を行った。16%PEG6000、pH7.0、20℃の条件下、シードより形の整った良質な結晶が多数生じた。一方、各種添加剤の添加による結晶化では、16%PEG6000、pH7.0の結晶化条件にスクリーニングした。ポリアミン類を添加した場合には静置後3日で結晶核が数個生じ、0.1mm程度の結晶に成長した。X線回折実験を行ったが、いずれも目標としている分解能3オングストロームを超える良好な回折点を得ることは出来ていない.また,並行してH5型ヘマグルチニンと含硫糖で治療薬候補硫酸化ガラクトース-OMeの結合性についてフェツインとの競合反応により検討した。HRP標識フェツインとの結合を約20%抑制するが,N-Acetylneuraminyl-lactoseの抑制より小さい.この結果より,複合体の結晶の作成にはsoakingの方法が適当と考え,soakingを行うと結晶性が悪くなりデータの質が悪くなるので、それらを考慮した結晶化の検討を行っている。
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