研究課題/領域番号 |
14572036
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
鈴木 亮 名古屋市立大学, 大学院・薬学研究科, 教授 (00344458)
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研究分担者 |
平嶋 尚英 名古屋市立大学, 大学院・薬学研究科, 助教授 (10192296)
中西 守 名古屋市立大学, 大学院・薬学研究科, 教授 (90090472)
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キーワード | MAPキナーゼカスケード / マスト細胞 / 免疫応答 / 蛍光蛋白質GFP / 顕微光学法 / 膜移行 / 核シャトル / 核排出シグナル |
研究概要 |
蛍光蛋白質GFP誘導体と顕微光学法を用いて、刺激応答に伴うMAPキナーゼ(mitogen-activated protein kinase ; MAPK)カスケードのダイナミクス(特にMAPKKK (Raf-1)の細胞膜への局在化、MAPK (ERK2)の核シャトル)を追究し、免疫応答制御機構におけるMAPKカスケードの機能を明らかにした。 1)MAPKKK (Raf-1)の細胞膜移行のダイナミクスと細胞膜ミクロドメインへの局在化 MAPKKK (Raf-1)と蛍光蛋白質YFPのキメラ遺伝子を作成し、これらを発現させたマスト細胞を用いて、抗原刺激時のYFP-Rafの可視化機能解析を行った。マスト細胞を抗原刺激するとYFP-Rafは刺激後約3分には細胞膜への移行が観察された。そして約6分後には細胞質へ戻ることが分かった。また、移行したYFP-Rafは、細胞膜に均一に存在しており、ミクロドメインで観られるような不均一な局在は観察されなかったことから、Raf-1の活性化は、細胞膜ミクロドメインに依存しないものと推察された。 2)MAPK (ERK2)の核シャトルのダイナミクスと免疫応答制御機構の解明 先の我々の研究成果から抗原刺激に伴い、YFP-ERK2はマスト細胞の細胞質-核の間をシャトルしていることを明らかにしている。そこで、不明な点が多いERK2の核排出機構について追究した。核排出シグナルを阻害するLeptomycin B存在下では、YFP-ERK2の核排出速度が遅くなっていることが分かった。ERK2は核排出シグナルを持たないことから、MAPKK (MEK)の核排出シグナルが、ERK2の核排出を制御していることが示唆された。 3)MAPKKKの細胞膜移行とMAPKの核シャトルの関係解明 さらに、YFP-Raf、CFP-ERK2を同一生細胞で解析することによって、MAPKKK(Raf-1)の膜移行とMAPK(ERK2)の核シャトルとの関係を追究した。YFP-Rafは、刺激後1分ぐらいから細胞膜の方へと移行し始める一方、CFP-ERK2はRaf-1は、やや遅れて核へと移行することが分かった。この時MAPK (ERK2)やMAPKK (MEK)の膜移行は観察されなかったことから、Raf-1からERK2へのシグナル伝達は、膜移行して活性化されたRaf-1が、細胞質に戻って来てMEK、ERK2を活性化しているのではないかと考えられた。 以上、本年度申請研究ではGFP誘導体を用いた単一生細胞レベルの解析から、免疫細胞でのMAPKカスケードの時間的、空間的なダイナミクスを明らかにした。次年度は蛍光共鳴エネルギー移動法などの実験手法を確立し、さらなるMAPKカスケード活性化の分子機構の解明を行う。
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