研究概要 |
申請者らは,YhhP蛋白質の立体構造の考察からβ1とα1間のターン領域にあるLRCPEPが新規のN-capモチーフであることを提唱した.この配列LRCPEPに種々の点変異を導入し,構造変化はNMR法により解析し,構造安定性については熱融解測定,尿素および塩酸グアニジン変性によって検討した.平成15年度では,電荷残基間の静電的相互作用の効果について検討した. YhhP点変異タンパク質の作成:R18およびE21に対して逆電荷または中性の残基で置換した8種の変異YhhP, R18A, R18E, E21A, E21K, R18A/E21A, R18A/E21K, R18E/E21A, R18E/21K,また,三点変異体R18E/P20A/P22A, E21K/P20A/P22Aも作成した. 構造安定性に及ぼす静電相互作用の影響:作成した変異タンパク質10種すべてについて,温度,塩酸グアニジンおよび尿素の濃度の関数としてCD測定を行い,それらの変性曲線の解析から融解温度T_m,塩酸グアニジンおよび尿素による変性中点濃度C_mなどの熱力学量を得た.Double mutant cycle法による解析結果から,R18とE21の相互作用エネルギーΔG_<int>は0.2kcal/molと小さな値が得られた.R18とE21はYhhPの構造安定性に大きく寄与しているが,電荷-電荷相互作用および電荷-helix dipole相互作用にそれぞれ独立に関与していることが明らかとなった. 変性剤に対する安定性:各変異タンパク質の安定性と静電相互作用を調べるために,変性剤として塩酸グアニジンと尿素を用い,両者の変性濃度の間での相関性を調べた結果,高い相関が認められた.いわゆる"二倍の法則"が成立した.それゆえ,塩酸グアニジンの効果が一般に誘電率の変化よりも主としてタンパク質内部の水素結合や疎水結合の破壊にあると推察された.
|