研究概要 |
Dipeptidyl peptidase III(DPP III)は、一般的な亜鉛含有ペプチダーゼが持つ亜鉛結合モチーフ(HExxH)とは少し異なったHELLGHという亜鉛結合モチーフ構造持つことが判っている。DPP IIIに特有な亜鉛結合モチーフの構造が酵素活性にどのように影響しているかを知るために、DPP IIIの亜鉛結合モチーフであるHELLGH中の1つのLeuを遺伝子工学的に除去し、一般の亜鉛含有ペプチダーゼの持つ亜鉛結合モチーフ構造(HExxH)に似たモチーフ構造(HELGH)を持つLeu^<453>-del-DPP III作成し、その性質を詳しく検討した。Leu^<453>-del-DPP III中の亜鉛イオンを除去しapo Leu^<453>-del-DPP IIIを調製し、Zh^<2+>,Cu^<2+>,Co^<2+>を加え活性回復を検討した。Zn^<2+>,Co^<2+>は完全に酵素活性を回復したが、Cu^<2+>では全く活性を回復しなかった。一方apo-DPP IIIでは、Zn^<2+>,Co^<2+>はもちろんの事、Cu^<2+>でも酵素活性を回復した。それ故、apo Leu^<453>-del-DPP IIIに銅イオンが結合していない可能性も考えられるので、Cu(II)-Leu^<453>-del-DPP IIIを単離して、可視部吸収スペクトル、電子スピン共鳴スペクトル、酵素比活性などを求めた。また比較のためにZn(II)-Leu^<453>-del-DPP IIIおよびCo(II)-Leu^<453>-del-DPP IIIも調製した。Cu(II)-Leu^<453>-del-DPP IIIの可視部吸収スペクトル及び電子スピン共鳴スペクトルは、銅イオンがLeu^<453>-del-DPP IIIのモチーフ部位に確かに結合していることを示したが、全くZn(II)Leu^<453>-del-DPP IIIおよびCo(II)Leu^<453>-del-DPP IIIに比べて、その酵素比活性は著しく低いものであった。以上の結果はDPP III中の亜鉛モチーフHELLGHをHELGHに部位特異的に変異させると、Cu(II)-Leu^<453>-del-DPP III中の銅イオンは、モチーフ部位には結合するが活性は著しく低下させる事がわかった。以上の結果より、Cu(II)-Leu^<453>-del-DPP IIIにおいて、亜鉛結合モチーフ部位の構造変化が、酵素の活性発現に直接的に影響することが明らかとなった。
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