研究概要 |
ヘパラン硫酸プロテオグリカン中のアポE結合部位であるヘパリンに対するアポEの結合特性について、3種類のアポE分子多型、アポE2、E3、E4及びそれらのN末、C末側機能ドメインを大腸菌発現系によって作製し、超遠心分離法を用いたヘパリン-セファロースゲルに対する結合平衡パラメータの測定を行った。アポE中のヘパリン結合主要アミノ酸残基であるリジンをアラニンに改変した変異体を作製し、^1H-,^<13>C-2次元NMR測定による各リジン残基のミクロ環境の評価とヘパリンに対する結合を比較した結果、C末ドメイン中のヘパリン結合部位が233番目のリジン残基付近であることを初めて明らかにした。また、intactなアポE中ではC末ドメインはヘパリン結合に寄与していないことも明らかとなり、その原因として、アポE分子の両ドメインをつなぐヒンジ部分がC末ドメイン中のヘパリン結合部位を覆うようなconformationをとっている可能性が示唆された。 さらに、表面プラズモン共鳴(SPR)法によるリアルタイムでの結合反応の速度論的評価を行ったところ、N末ドメインの結合親和性はC末ドメインと同程度であった。しかしながら、アポEのヘパリン結合が従来の単一反応とは異なる二段階反応を経て安定な複合体を形成すること、アポEの主要なヘパリン結合部位であるN末ドメインでその傾向が顕著であることを見出した。N末ドメイン中にはアルギニンやリジン残基による静電的な相互作用に加えて、ヘパリン分子と水素結合を形成できるアミノ酸残基が多く存在することから、アポEが二段階結合反応を経てヘパリンと安定な複合体を形成するには、アポEとヘパリン分子間での水素結合が大きく寄与していると考えられた。
|