研究概要 |
1)ラット乳癌細胞の悪性化に関与する遣伝子の探索 ラット乳癌組織から樹立された退縮型癌細胞ER-1と、ER-1細胞をプラスチックプレートと同時にラットに移植して悪性形質を獲得させたERpP細胞を用いて、DNAマイクロアレイ解析を行った。ラット・オリゴチップは、北海道DNAチップコンソーシアムで作製された、ラットの遣伝子約5,000個に対応する合成オリゴがスポットされているものを用いた。その結果、悪性度の高いERpP細胞で発現が亢進している遺伝子が17個、発現が低下している遺伝子が14個検出された。発現が亢進している遺伝子の内、5種類について,RT-PCR法にて確認したところ、アレイ解析の結果と高い相関性が見られた。また、今回の解析で、新たな機能未知遺伝子の、癌細胞悪性化に伴う発現亢進の可能性が見いだされた。 2)ヒト乳癌細胞の悪性化に関与する遺伝子の探索 1)の結果を踏まえて、ヒト乳癌細胞株を用いて同様の解析を行った。悪性度の低い準正常細胞株HBL-100と、転移性細胞株MDA-MB-453を用いてDNAマイクロアレイ解析を試みた。DNAチップは、タカラ社の「IntelliGene Human Cancer CHIP Ver.3.0」を用いた(約640種類の癌疾患に関連するヒト由来既知遺伝子のcDNA断片がアレイされている)。アレイ解析の結果、悪性度の高いMDA-MB-453細胞で発現が亢進している遺伝子が数種類、発現が低下している遺伝子が数種類検出された。興味深いことに、ヒト乳癌細胞株においてもラット乳癌細胞の場合と同様に、悪性度の高い細胞株でCD9の遺伝子発現が強く亢進している結果が得られた。CD9遺伝子の発現亢進は他の癌細胞においても報告されているが、分子機構の詳細はまだ明らかではなく、癌細胞悪性化のマーカー遺伝子となる可能性も高いので、今後の重要な研究課題である。
|