研究概要 |
テネイシンX(TNX)は細胞外マトリックス・テネイシンファミリーに属する。我々は癌細胞の増殖、浸潤、転移におけるTNXの役割を明らかにするためにTNX欠損(-/-)マウスの作成を行ない、メラノーマ細胞を足に接種し、その増殖、浸潤を検討した。その結果、TNX-/-マウスにおいて、メラノーマの浸潤、転移が、野生型マウスに比べ有意に高いことが明らかとなった。これはマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)(特にMMP-2)活性のTNX-/-マウスでの亢進による。 本研究では、TNX欠損による、MMP活性化の分子機構、TNX欠損により活性化されるシグナル伝達経路の同定を試みた。TNX+/+線維芽細胞とTNX-/-線維芽細胞を用い、それらの細胞にMEK1阻害剤、JNK阻害剤、p38阻害剤、P13キナーゼ阻害剤、PKC阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤等の各種シグナル伝達経路の阻害剤を添加し、MMP-2活性化の有無をザイモグラフィーにより検討した。その結果JNK阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤により、TNX-/-細胞において、薬剤無添加時に見られたMMP-2の活性化が抑制されることが明らかとなった。また,その時のMMP-2遺伝子のプロモーター活性を測定してみると、JNK阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤により、プロモーターの活性化が抑制されていることが明らかとなった。また実際にTNX-/-細胞において、TNX+/+細胞に比べJNK/SAPK、チロシンキナーゼのリン酸化が亢進していることが明らかとなった。以上のことより、TNX欠損によるMMP-2活性化には、JNK/SAPK経路、チロシンリン酸化経路が関与していることが明らかとなった。
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