正常血圧ラットおよび実験的高血圧ラット(高血圧自然発症ラット、Dahl食塩感受性ラット、DOCA-salt高血圧ラット)を用い、正常食および高ナトリウム含有食をそれぞれ1週間続けた時の尿量をメタボリックケージを用いて測定し、同時にtail-cuff法を用いて非観血的に血圧を測定する事により、圧-利尿曲線を作成した。正常血圧ラットに比較して、いずれの実験的高血圧ラットにおいても圧-利尿曲線は右方に変位していたが、高血圧自然発症ラットの圧-利尿曲線の傾きが正常血圧ラットのそれと同程度であったのに対し、Dahl食塩感受性ラットとDOCA-salt高血圧ラットの圧-利尿曲線の傾きは低下しており、食塩感受性である事が確認された。高血圧自然発症ラットに各種降圧薬を経口投与したところ、アンジオテンシン変換酵素阻害薬は圧-利尿曲線の傾きを低下させたが、アンジオテンシンtype I受容体拮抗薬およびカルシウム拮抗薬は圧-利尿曲線の傾きを変化させる事なく曲線自体を左方へ変位させた。また、Dahl食塩感受性ラットではアンジオテンシン変換酵素阻害薬は圧-利尿曲線の傾きを変化させる事なく曲線自体を左方へ変位させ、DOCA-salt高血圧ラットでは圧-利尿曲線の有意な変位は観察されなかった。以上の結果より、高血圧症の成因の違いにより圧-利尿曲線の形状や降圧薬の影響が異なる事が明らかになった。同じレニン-アンジオテンシン系に作用するアンジオテンシン変換酵素阻害薬とアンジオテンシンtype I受容体拮抗薬とで圧-利尿曲線への影響が異なった点が興味深い。
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