正常血圧ラットおよび高血圧自然発症ラットを用い、高ナトリウム含有食をそれぞれ1週間続けた後にthiobutabarbital麻酔下に側腹切開し、尿採取および腎血流量の測定を行い、これらの指標に対する腎潜流圧の影響を測定し、急性庄-利尿曲線を作成した。正常血圧ラットに比較して高血圧ラットでは庄-利尿曲線は右方に偏位していたが、アンジオテンシン(Ang)変換酵素阻害薬またはAng type I受容体括抗薬の静脈投与により、いずれのラットにおいても庄-利尿曲線の傾きが上昇した。また、尿浸透圧、糸球体濾過量、腎血流量には、両薬物とも明確な作用を示さなかった。これらの結果は前年度に得られた慢性的庄-利尿曲線に与えた両薬物の効果とは異なっており、薬物投与形態とその検出方法による差異を考慮する必要性を示唆している。一方、高ナトリウム含有食およびAng type I受容体括抗薬を1週間摂取させた高血圧自然発症ラットを麻酔下に尿採取および腎血流量の測定を行い、これらの指標に対するAng type II受容体括抗薬の影響を検討した所、通常状態では観察されないAng type II受容体を介した利尿作用が認められた。このtype II受容体の尿細管における役割を明確にするため、ラットの腎尿細管初代培養細胞のAng受容体発現量を確認したところ、mRNAレベルではその発現が確認されるものの、受容体結合実験ではAng type I受容体の10分の1程度の発現と算出された。そこでより高発現している出産後5日の新生仔ラットの腎臓より初代培養細胞を作製し、Ang type II受容体の機能を検討したところ、extracellular signal-regulated kinaseのリン酸化を促進する結果を得た。今後、このシグナル伝達経路の庄-利尿関係への影響の解明が期待される。
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