大腸菌も海洋性の細菌であるVibrio alginolyticusもH^+駆動力を消費してNa^+を排出するNa^+/H^+アンチポーターNhaAとNhaBを持つことで耐塩性になっている。我々はVibrioのNhaBの構造と機能を検討してきた。この膜蛋白質をコードするnhaB遺伝子に部位特異的に変異を導入し、膜貫通領域に保存されている147番目のAsp(酸性アミノ酸)をMetに変えた変異蛋白質を膜に発現させると、おそらくNa^+の流入路となり、大腸菌が死ぬ事を見いだした。NhaBD147M変異体遺伝子をlacプロモーターの下流に置き、IPTGで誘導すると、もし膜への組み込み装置が正常に働く場合には細胞毒性を発揮し細胞は死ぬけれど、もし膜への組み込み装置に異常があれば、余分な膜蛋白質の膜への組み込みが十分に起きず死なないと想定した。そこで、独立に選択された温度感受性変異株(ts株)に遺伝子を導入しIPTG誘導したところ、予想どうり、多くの死ぬ株の中から、死なない株が11株選択できた。今後、大腸菌の染色体遺伝子のバンクを作り、これらのts株を補うプラスミドを選択し、そのプラスミドを導入するとNhaBD147MをIPTG誘導する事で細胞が死ぬ事を確認する予定である。さらに、選択したプラスミドの中から、どの遺伝子がこれらの現象の原因か特定し、この中に膜への組み込み装置の遺伝子(yidCやsecYEG)が含まれるか検討する計画である。
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