膜蛋白質は、細菌からヒトまで、細胞の生命活動に重要な役割を演じている。トランスポーターと呼ばれる膜蛋白質は、様々な化学構造を持つ物質を細胞内外へ輸送する。もし、トランスポーターの機能が損なわれたら、細胞は生命を維持する事ができない。これまでに、少なくとも6種類のトランスポーター(と4種類のチャネル)の3次元構造が明らかにされ、その構造が驚くほど複雑である事が明らかとなった。膜蛋白質の複雑な3次元構造は、アミノ酸配列から自動的に組み立てられるのであろうか?細菌の細胞膜と、動物細胞の小胞体膜においては、膜蛋白質の膜への組み込みにSec系が中心的役割を担っている事が明らかにされている。我々は、膜蛋白質の膜への組み込みに働くまだ見つかっていないプレーヤーが存在するのではないかと予想し実験を行っている。 細胞毒性が有る膜蛋白質(トランスポーター)の遺伝情報を、lacプロモーターの下流に組み込んだプラスミドを導入した、温度感受性変異株(ts株)に、IPTGを加えると、通常は生育が止まる。IPTGを加えても生育が阻害されない11株を選択した。大腸菌の染色体を組み込んだプラスミドのバンクを作成した。先の11のts株の中から、4株において、42℃での生育を補うプラスミドをバンクの中から選択する事ができた。選択したプラスミドを導入したts株は、細胞毒性が有る膜蛋白質をIPTG誘導すると、菌の生育は強く阻害されるようになった。 4株を補うプラスミドは、それぞれ異なった染色体の位置にある遺伝子をコードしていた。現在、これらの遺伝子が変異した結果、細胞毒性有る膜蛋白質を発現誘導しても、何故、細胞が死ななくなったのか検討を進めている。
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