研究概要 |
生体反応に関与する代表的なカチオンとして、Na^+、K^+、Ca^<2+>、Mg^<2+>などがある。カチオンは(H^+を除き)細胞内で合成できず、代謝もできないので、生体膜を隔てたカチオンを通過させる事ができる膜蛋白質だけが細胞内カチオン濃度の調節を行う事ができる。そのために、ヒトや細菌の細胞ではNa^+/H^+交換輸送系やカチオンチャネル、ヒト細胞ではNa^+/H^+-ATPaseや細菌ではK^+取り込み系などのカチオンを輸送する数多くの膜蛋白質が存在する。これまでに代表的なカチオン輸送系膜蛋白質とその機能を助ける蛋白質をコードする遺伝子がクローニングされ報告された。近年、ヒトから細菌まで数多くの生物の全塩基配列が報告されると、機能が解っているカチオン輸送系にアミノ酸配列が似ているが、その本当の活性や役割分担が解らない遺伝子が多数存在している事が明らかになってきた。これらの遺伝子はどのような条件で蛋白質が発現するのか。相同性が有る蛋白質相互に機能的な役割分担が有るのか。これまでに知られていない機能が有るのか。このような疑問を検討するのに、細菌はとても良い系である。我々は、全塩基配列が報告された腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)を代表生物にして、上記の観点から、カチオン輸送系に類似する蛋白質をコードする遺伝子の解析を行った。 本研究では、Na^+を輸送する膜蛋白質に相同性が有る膜蛋白質の解析を目的として研究を行った。腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)から、Na^+/H^+交換輸送系(Na^+/H^+antiporter)に相同性が見える12種類の遺伝子をクローニングし、大腸菌が持つ3種類のNa^+/H^+交換輸送系欠失変異株(T0114)で検討を行った。これまでに報告された、NhaA, NhaBばかりでは無く第三の遺伝子がコードする蛋白質も耐塩性の活性を持つ事が明らかとなった。その他の9種類に関しては、十分な活性を検出できなかった。
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