研究概要 |
自己免疫性肝炎患者血清中にはセレノシステインtRNAに結合するタンパクSLA/LPに対する自己抗体の存在が知られていたが、これがセレノシステイン合成酵素ではないかとの推論がなされた。今回、慈恵医大の松藤先生より自己免疫性肝炎患者血清4検体が提供されたのでセレノシステイン合成への関与について検討した。 1,4検体のうち2検体でセレノシステイン合成の阻害が見られた。これは血清中のグロブリンに依るものであり、またこの阻害はRNaseの関与ではなかった。 2,SLA/LPペプチドに対するウサギ抗体での阻害は弱かった。 3,発現SLA/LPタンパクを用いたELISAではセレノシステイン合成の阻害のパターンとは合致しなかった。 4,発現SLA/LPタンパクにはセレノシステイン合成活性は見いだせなかった。 5,発現SLA/LPタンパクで患者血清中の阻害抗体を吸収できなかった。 以上により、自己免疫性肝炎患者血清中にはセレノシステイン合成の阻害を見出したが、これは抗SLA/LPによるものではなく別のタンパクに対する抗体と考えるに至った。この血清を用いたWestern法によりセレノシステイン合成酵素を探索中である。
|