研究概要 |
ダイノルフィン類の脊髄疼痛伝達機構における役割を明らかにすることを目的として、プロダイノルフィン由来のペプチドをマウスの脊髄クモ膜下腔内へ投与し、行動薬理学的に検討を行なったところ以下の結果が得られた。 1.ビッグダイノルフィン(0.3-3fmol)は投与後5-15分をピークとする疼痛関連行動を誘発した。 2.ダイノルフィンAも300fmolの用量において有意な疼痛関連行動を誘発したが、ダイノルフィンBは1000pmolの用量においても有意な痔痛関連行動を誘発しなかった。 3.ビッグダイノルフィン誘発性疼痛関連行動はNMDA受容体イオンチャネル複合体ポリアミン調節部位の拮抗薬であるイフェンプロジル(2-8nmol)、NMDAイオンチャンネル遮断薬であるMK-801(0.25-4nmol)およびNMDA受容体拮抗薬であるD-APV(1-4nmol)よって用量-依存的に抑制された。 4.ビッグダイノルフィン誘発性疼痛関連行動はNMDA受容体イオンチャネル複合体グリシン調節部位の拮抗薬である7-クロロキヌレニン酸(4nmol)、非NMDA受容体拮抗薬であるCNQX(0.5nmol)、NK-1受容体の特異的拮抗薬である[D-Phe^7,D-His^9]-SP(6-11)(2nmol)およびNK-2受容体拮抗薬であるMEN-10,376(2nmol)では全く影響されなかった。 以上の結果から、ビッグダイノルフィンはNMDA受容体イオンチャネル複合体上のポリアミン調節部位に作用し、その結果この複合体の機能が亢進して疼痛関連行動が発現することが判明した。また、この疼痛関連行動の発現にはNMDA受容体イオンチャネル複合体グリシン調節部位、非NMDA受容体機構およびタキキニン系は関与しないことが判明した。 なお、上記に示した結果はBrain Research 952,7-14(2002)に公表した。
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