平成14年度科学研究費補助金の助成によりプロダイノルフィン由来オピオイドペプチドのビッグダイノルフィン(BD)が、脊髄NMDA受容体イオンチャネル複合体上のポリアミン調節部位に作用し、その結果この複合体の機能が亢進して疼痛関連行動を誘発することを明らかにした。また、先の研究でBDと同じくポリカチオニック化合物であるスペルミンもBDと同様の機序で疼痛関連行動を誘発することを報告している。従って、BD誘発性疼痛関連行動はこのペプチドが有している陽性電荷に基づいている可能性が推察される。そこで、この点を明らかにする目的で典型的なポリカチオニック化合物であるポリ-L-リジンをマウスの脊髄クモ膜下腔内へ投与し検討を行なったところ以下の結果が得られた。 1.ポリ-L-リジン(12および36pg)は投与直後10分間をピークとし、50分後においても観察される持続的な疼痛関連行動を誘発した。 2.ポリ-L-リジン誘発性疼痛関連行動はポリアミン調節部位の拮抗薬であるイフェンプロジルをはじめとするNMDA受容体関連拮抗薬によって有意に抑制された。 3.ポリ-L-リジン誘発性疼痛関連行動に対し、NMDA複合体のグリシン調節部位の拮抗薬、非NMDA受容体の拮抗薬およびタキキニン受容体の拮抗薬は無影響であった。 以上の結果から、BDはこのペプチドが有している陽性電荷のためポリアミン調節部位に作用し、疼痛関連行動を誘発することが示唆された。 なお、上記に示した結果はBrain Research (in press)に公表した。
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