研究概要 |
脊髄疼痛伝達機構における内因性ダイノルフィン系の役割を明らかにすることを目的として、ダイノルフィンの分解に関与しているシステインプロテアーゼの阻害薬であるN-エチルマレイミド(NEM)をマウスの脊髄クモ膜下腔内(i.t.)へ投与し、検討したところ以下の結果が得られた。 1.NEM(6.7-15nmol)をマウスのi.t.へ投与した際、投与後10-25分をピークとする疼痛関連行動を用量-依存的に誘発した。 2.NEM誘発性疼痛関連行動はダイノルフィンA抗体(1:200-1:8)およびダイノルフィンB抗体(1:5000-1:40)によって希釈倍率に依存して抑制された。 3.プロダイノルフィンノックアウトマウスにNEMを投与した結果、野生型マウスで認められた疼痛関連行動は観察されなかった。 4.NEM誘発性疼痛関連行動はNMDA受容体イオンチャネル複合体ポリアミン調節部位の非選択的拮抗薬であるイフェンプロジル(0.25-4nmol)、選択的拮抗薬であるアルカイン(62.5-125pmol)やアグマチン(3-30pmol)およびイオンチャネル遮断薬であるMK-801(0.04-4nmol)によって用量-依存的に抑制された。 以上の結果から、NEMによって分解が阻害されたダイノルフィン類がNMDA受容体複合体のポリアミン調節部位に作用し、この複合体の機能が亢進され疼痛関連行動を誘発することが示唆された。 なお、上記に示した結果はPain,113,301-309(2005)に公表した。
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