放線菌が生産する抗HIV活性を有する新規たん白質actinohivin(AH)の分子構造と生物活性との関係を明らかにするため、既に確立した大腸菌により組換えAHを効率的に生産する技術をもちいて各種変異AHを作成しその合胞体形成阻害活性を調べた。AHは分子内に互いに相同性の高い3つのセグメント(seg)で構成されており、carbohydrate binding module(CBM)13に分類される糖結合たん白質である。AHはHIV表面たん白質gp120のhigh mannose型糖鎖に結合してHIVがCD4陽性T細胞に接着する過程を阻害するものと考えられている。ホモロジーモデリングソフトFAMSを用いてAHのアミノ酸配列情報から立体構造を予測したところ、AHを構成する3つのsegはそれぞれが独立したリング状構造をもち、それらがクローバー葉状に配置していると推定された。これまでの研究で、AHを構成するseg単独では抗HIV活性を示さないが、C末側2つのsegからなる欠失変異体ではAHの約1/40の活性が認められた。そこでseg1の各種欠失変異体を作成し合胞体形成阻害活性を調べたところ、N末端より12アミノ酸まで欠失させても活性にはほとんど影響しないことがわかった。CBM13に分類されるたん白質にはsegのC末端にQXW配列が保存されており、糖鎖結合活性との関連が議論されている。そこで、AHの各segのQXW配列中のグルタミンをアラニンに置換した変異体(Q^<33>A、Q^<71>A及びQ^<109>A)について合胞体形成阻害活性を測定した。まず、3つのsegのうち1つに変異を導入した場合、合胞体阻害活性はどのsegに変異を導入した場合でもAHの1/13〜1/20に低下した。この活性の強さはsegを1つ欠失させた変異体と同程度であることから、QXW配列のQはsegが糖鎖を認識するために重要なアミノ酸残基であると考えられた。また、2つのsegトのQをAに置換すると活性は1/100以下に低下した。このことはAHを構成する3つのsegは立体構造の維持だけでなく、各segが1単位として糖鎖との結合に直接かかわっているものと考えられた。そこで、次にseg1をモデルとしてAla置換変異体を作成し、合胞体形成阻害活性を調べた結果、4つのアミノ酸残基(^<15>D、^<23>Y、^<28>N及び^<32>Y)をアラニンに置換した時、segを1つ欠失させた変異体と同程度に合胞体阻害活性の低下が認められた。
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