研究概要 |
インフルエンザウイルス(FluV)のRNAポリメラーゼは,宿主のmRNAからキャップ構造を含んだRNA断片を切り出し,これをプライマーに利用してmRNAを合成する.本研究ではFluVのキャップ化RNAプライマー切り出し反応の分子機構を明らかにすることを目的に,本年度はFluV A型(FluV-A)およびB型(FluV-B)エンドヌクレアーゼのRNA基質特異性について解析した. 1.in vitroキャップ化RNAプライマー切り出し反応系の確立:既に構築したin vitroキャツプ化RNAプライマー切り出し反応系を基本に,反応諸条件を至適化し,効率の良い系を確立した.この系で切り出されたRNA断片はヌクレオチドの添加によりRNA鎖を伸長したことから,プライマーとして機能することが示された. 2.5'末端構造の異なる基質RNAの合成:(1)RNAの調製:T7RNAポリメラーゼによるin vitro転写系で,33ヌクレオチド長のRNAを合成した.(2)酵素の調製:ワクシニアウイルス感染HeLa細胞抽出液から,硫安沈殿およびイオン交換クロマトグラフィーにより,ワクシニアウイルスキャッピング酵素を部分精製した.また,ヒトmRNAメチル基転移酵素を大腸菌内で大量発現し,精製した.(3)キャップ化RNAの調製:これらを用いて,m^7GpppGm-,GpppGm-,pppGm-,m^7GpppG-,GpppG-,pppGm-RNAを合成した. 3.FluV-AおよびFluV-Bエンドヌクレアーゼの基質特異性:これら5'末端構造の異なるRNAを用いて,in vitroキャップ化RNAプライマー切り出し反応を行ったところ,キャップのメチル基はFluV-Aのエンドヌクレアーゼ活性には必要であるが,FluV-Bの場合には必ずしも必須でないことが示され,両ウイルス型でキャップ構造の認識能に差があることが見出された.
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