研究概要 |
インフルエンザウイルス(FluV)のRNAポリメラーゼは,宿主のmRNAからキャップ構造を含んだRNA断片を切り出し,これをプライマーに利用してmRNAを合成する.本研究ではFluVのキャップ化RNAプライマー切り出し反応の分子機構を明らかにすることを目的に,本年度はFluVエンドヌクレアーゼによるRNAの切断位置,および切断部位の塩基特異性を明らかにすること,および抗インフルエンザウイルス薬のスクリーニング系を確立することを目的とした. 1.キャップ化RNA切断部位近傍の塩基配列の解析:昨年度構築したin vitroキャップ化RNAプライマー切り出し反応系を基本に,解析を進めた.ランダムな配列のキャップ化RNAを合成し,これをFluVエンドヌクレアーゼの基質に用い,切り出されたキャップ化RNA断片を分析したところ,それらは11から13ヌクレオチド長であり,その3末端はAまたはG残基であることが明らかとなった.また,3側の断片に関してもその5末端塩基を分析したところ,A残基であることが示された.これらの結果より,FluVエンドヌクレアーゼは,キャップ構造から11から13ヌクレオチドの位置にあるAまたはG残基とA残基を認識してその間を最も効率よく切断している可能性が示された. 2.インフルエンザウイルス薬のスクリーニング系の確立:FluVのキャップ依存エンドヌクレアーゼを阻害する活性を指標に,薬抗剤を簡便にスクリーニングできる系を構築した.5末端キャップ構造を放射標識し,3側をビオチン化したRNAを調製し,これをFluVエンドヌクレアーゼの基質に用い,in vitroキャップ化RNA切り出し反応を行った.反応後のRNAをストレプトアビジンビーズで回収することにより,FluVエンドヌクレアーゼが阻害されると,放射活性がビーズ画分に回収されるスクリーニング系を構築した.
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