研究概要 |
計画に従って実験を行った結果,以下の新知見を得ると共に,今後の研究の方向性を確立した。 1.トロンボモジュリン(TM)と組織因子(TF)の転写活性を変動させる核内受容体とリガンドの探索 TMの抗原量と活性に対して計画に挙げたいずれの薬剤も大きな影響を示さなかったが,新たに調べたスタチン系薬剤はTM発現を高めた。フィブレート系薬剤はTNF-αにより上昇したTF活性を抑制し,転写レベルでその発現増加を低下させた。従って,本研究の方向性を以下に決定した。1)TMに関しては新たにスタチン系薬剤による検討を加える。2)TF発現をTNF-αにより高めた条件下において,PPAR-αのリガンドであるフィブレート系薬剤を中心に検討する。 2.核内レセプターの発現に及ぼすフィブレート系薬剤の影響 TNF-αによりJun/Fosファミリーの発現増加を確認した。フィブレート系薬剤はその増加を比較的早期に低下させた。これにより,TNF-α依存性のTF発現増加に対するフィブレート系薬剤による抑制機構の1つを提示できた。 3.TFや核内レセプターの発現プラスミドの構築とリガンド依存性の検討 上記結果を基にTF遺伝子上流のAP-1配列を標的とし,AP-1エレメントを含むルシフェラーゼレポータープラスミドと核内レセプターの発現プラスミドを構築した。TNF-α処理後のHMEC-1細胞におけるTF転写活性は,RARの発現増加時やRXRの発現後にフィブレート系薬剤の処理を行った時に減少した。すなわち,TFのプロモーター活性はRARやRXRの発現レベルと密接に関連し,これらの相互作用を介したTF発現に対する制御機構の存在が示唆された。
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