研究概要 |
動脈硬化の低侵襲的診断、治療への適用を意図し,て、ヒト動脈硬化粥腫を免疫原とし、in vivoで動脈硬化病巣表層部を結合するモノクロナル抗体(ASH1a/256C)を調製した。この抗体の抗原は、Phosphatidylcholine(PC)-Cholesterol Complexである。本抗原がどのようにして形成されるのか解析するために、マウスJ774細胞を泡沫化させ本抗原を誘導することに成功した。本抗原は泡沫化直後には発現しないが、培養4日目には細胞のPeripheralな領域に脂質粒として認められる。さらに、培養7日目以降、FC-rich脂質粒を持つ泡沫細胞は、rupture(崩壊)して脂質粒を放出するのが観察される。 【本年度の成果】昨年度には、この泡沫細胞培養系で形成されるFC-richな脂質粒が、PC-Cholesterol Complexの1つであることが明らかにした。本年度は、この泡沫細胞の崩壊に関わるFC-richな脂質粒と、細胞内過酸化脂質、さらには酸化LDL特異認識抗体(FOH1a/DLH3)抗原(酸化PC)の発現、泡沫細胞の死(Apoptosis)との関連について解析した。AcLDL(アセチル)LDLで泡沫化した細胞は、FC-rich脂質粒形成(ASH1a/256C抗原)の後、崩壊する。 (1)この機構はFC蓄積に伴うUPR反応によってApoptosisしていることを明らかにした。また培養経過で、(2)細胞内で過酸化脂質の形成がみられ、泡沫細胞の崩壊後、培養液中に放出されること、また、(3)その過酸化脂質を含む培養液を別の細胞に取り込ませて培養すると、FOH1a/DLH3抗原の発現がみられることが明らかにした。この結果、アセチルLDLのようなPC-cholesterol Complexを形成するような変性LDLによって泡沫細胞内で形成される過酸化脂質が、泡沫細胞の崩壊と共に、放出され再度別の細胞が取り込むことを繰り返すことで、酸化脂質が病巣に蓄積する可能性が示唆された。同時にFC-rich脂質粒も細胞間マトリクスに蓄積する。さらに、(4)この実験系をもう1世代繰り返して、3世代まで培養を続けると、培養液中にコレステロールの結晶が形成される。このような泡沫細胞の崩壊で病巣にFCが結晶として蓄積していくと考えられた。
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