研究概要 |
Oxidized protein hydrolase(OPH)は、ヒト赤血球や各種培養細胞内、種々の生体組織中に存在し、酸化的損傷を受けた蛋白質を選択的に分解する80kDaのセリンプロテアーゼである。OPHを高発現した培養細胞株(COS-7-OPH細胞)が酸化ストレスに曝されても、細胞内の酸化タンパク質蓄積量は少なく、細胞死も誘導されにくいことを明らかにした。さらに、細胞内タンパク質分解系として知られているプロテアソームとの関わりに着目し、OPHやプロテアソームを阻害した条件下において、酸化ストレスを暴露し、細胞内の酸化タンパク質の蓄積量を調べた。COS-7-OPH細胞にOPHの特異的な阻害剤であるacetyl leucine chloromethyl ketone(ALCK)及び、プロテアソーム阻害剤のepoxomicine(epox)やlactacystin(LC)を加え、酸化ストレスとしてparaquatを添加して24hインキュベートした。Cell lysateは2,4-dinitrophenylhydrazine(DNPH)と反応後、anti-DNP抗体を用いたELISA法によりタンパク質カルボニル量を測定した。その結果、ALCKを添加したCOS-7-OPH細胞ではparaquat濃度に依存してタンパク質カルボニル量が増加し、それに相関して細胞の生存率が低下した。一方、epoxを添加した場合では、paraquat濃度を上昇させても細胞内のタンパク質カルボニル量の蓄積はほとんど見られなかった。このことより、細胞内の高発現したOPHが酸化タンパク質の蓄積を阻害していることが示唆された。ALCKとepoxを同時に添加して、OPHとプロテアソームの両者の活性を阻害した場合では、paraquat濃度に依存した顕著なタンパク質カルボニル量の蓄積が見られた。以上の結果から、酸化ストレスに曝された細胞内では、OPHとプロテアソームの両者の働きにより、酸化タンパク質の蓄積を軽減していることがわかった。
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