本研究では、新たに見いだした酸化タンパク質加水分解酵素(oxidized protein hydrolase:OPH)の細胞内機能と動態の解明を目的として検討を行った.本研究によってOPHの酸素ストレスに対する二次防御システムとしての意義が明らかになった。 培養細胞COS7を用いてOPHを過剰に発現したCOS7OPHを樹立した。COS7とCOS7-OPHに過酸化水素とparaquatを添加して酸素ストレスを誘導した。COS7ではタンパク質のカルボニル含量が酸化ストレス依存的に上昇し、それに伴って細胞の生存率が低下した。COS7-OPHではカルボニル含量の酸化ストレス依存的上昇が少なく、また細胞の生存率の低下も少なかった。COS7-OPHの方がCOS7に比べて酸化ストレスに対して抵抗力が高いことが分かった。 OPHと変性タンパク質分解系のプロテアソームとの関わりについて検討した。COS-7-OPH細胞にOPHの特異的な阻害剤であるacetyl leucine chloromethyl ketone(ALCK)及び、プロテアソーム阻害剤のepoxomicine(epox)を加え、酸化ストレスとしてparaquatを添加して調べた。ALCKを添加したCOS-7-OPH細胞では、paraquat濃度に依存してタンパク質カルボニル量が増加し、それに相関して細胞の生存率が低下した。一方、epoxを添加した場合では、paraquat濃度を上昇させても細胞内のタンパク質カルボニル量の蓄積はほとんど見られなかった。細胞内の高発現したOPHが酸化タンパク質の蓄積を阻害していることが示唆された。ALCKとepoxを同時に添加して、OPHとプロテアソームの両者の活性を阻害した場合では、paraquat濃度に依存した顕著なタンパク質カルボニル量の蓄積が見られた。以上の結果から、酸化ストレスに曝された細胞内では、OPHとプロテアソームの両者の働きにより、酸化タンパク質の蓄積を軽減していることがわかった。
|