研究概要 |
生体膜脂質過酸化反応の二次分解産物としてラセミ体として生成する4-hydroxy-2(E)-nonenal(4-HNE)は、アテローム性動脈硬化、アルツハイマー病、ならびにパーキンソン病患者の病態組織中よりHNE蛋白質付加体とともに高濃度に検出され、4-HNE生成とこれら疾病との因果関係が最近注目されている。 前年度著者は、ラット正常肝細胞(Clone9)に対する4(S)-ならびに4(R)-HNEエナンチオマーの毒性作用と同細胞における解毒代謝反応の立体選択性を検討し、4HNEの細胞毒性としては初めて4(S)>4(R)の立体選択性を明らかにした。 本年度は当初の研究計画に従い、4-HNEの標的組織の一つである神経細胞における4-HNEエナンチオマーの毒性作用とその解毒代謝反応の立体選択性について検討し、下記の1)〜3)の研究成果を挙げることができた。 1)ラット神経様細胞PC12に対する4-HNEエナンチオマーの細胞毒性作用は,25μMを境にして低濃度領域ではアポトーシスが、高濃度領域では主にネクローシスが誘導され、また両細胞毒性作用には4(S)>4(R)の立体選択性が認められた。 2)PC12細胞における4-HNEの解毒代謝はGSH抱合が最大で、ついでNADH依存的な還元、NAD^+依存的な酸化の順に低下した。また、このGSH抱合反応には、(S)>(R)の立体選択性が認められた。 3)PC12細胞中のGST分子種組成を初めて明らかにし、上記2)の抱合反応の立体選択性がrGSTA4-4分子種に起因することを解明した。
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