植物エストロゲンのダイゼイン(DZ)およびゲニステイン(GS)のヒト代謝物として、それぞれの単硫酸抱合体、単グルクロン酸抱合体、二重硫酸抱合体、二重グルクロン酸抱合体そして硫酸-グルクロン酸混合二重抱合体が尿中に排泄されていることが知られている。既に15年度までに、DZおよびGSの単硫酸抱合ならびに二重硫酸抱合については抱合に関わるヒト硫酸基転移酵素(SULT)の分子種を明らかにした。そこで、本年度はヒトグルクロン酸転移酵素(UGT)分子種の発現系を用いて、GSの単および二重抱合反応について動力学的解析を含めた検討を行った。その結果、GSからそれぞれ7-あるいは4'-位の水酸基が抱合された単グルクロン酸抱合体の異性体(7-glucuronideおよび4'-glucuronide)が生成した。両抱合体の生成比は、7-glucuronide>4'-glucuronideであり、抱合部位の位置選択性が認められた。なお、用いた条件下ではdi-glucuronideは生成しなかった。 さらにGSの単グルクロン酸抱合ならびに硫酸-グルクロン酸混合二重抱合体生成に関与するSULTおよびUGT分子種について、発現酵素を用いて検討を行った。GSの単グルクロン酸抱合にはUGT1A1、1A3、1A6、1A9および2B7が活性を示し、そのうち、主にUGT1A1および1A9が抱合を行うと考えられた。さらに、GSの7-sulfateおよび4'-sulfateを基質として混合二重抱合体生成に関与するUGT分子種を検討したところ、UGT1A1のみがGS4'-sulfateを基質とした場合のみにsulfo glucuronideを生成することが明らかになった。一方、GS glucuronideを基質として、各SULT分子種によるsulfoglucuronide生成活性を検討したところ、SULT1A1、SULT1E1およびSULT2A1が、GS 7-および4'-glucuronideいずれを基質とした反応においてもGS sulfoglucuronide生成活性を有することが明らかになった。なお、kcat/Km値の比較から、SULT1E1が最もこの反応に関与していると考えられた。これらの結果から、植物エストロゲンのGSのヒト肝におけるsulfoglucuronideの生成経路として、最初の反応としてまずUGT1Aにより7-glucuronideが生成し、次いでSULT1E1によりGS 7-glucuronide-4'-sulfateが生成する経路が主であると考えられた。
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